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平成25年11月1日

~雲を掴むような「合理的配慮」~

 改正障害者雇用促進法の運用がかなり分かりにくいものとなりそうです。なかでも当初の予想通り、「合理的配慮」の具体的提供については、そもそも各企業の環境条件によって内容が大きく異なることが前提となっているため、結果として障害者の待遇に不公平感が強まる可能性があります。
 同改正法では、企業に対し「合理的配慮」の提供義務付けを明記しました。これは、障害者本人からの申出に基づき、障害による業務上の支障を施設・設備、人的支援、職場管理などの面から取り除くべきとした規定です。しかし、実際に「合理的配慮」を提供する企業の立場に立つと、そう単純ではありません。一般的・世間的な提供水準はどうなっているか、そのなかで自社が対応可能な水準は、などといった極めて曖昧な基準により判断せざるを得ないことになり、従って各企業で対応が異なることになります。
 現在、厚労省内で運用基準となる指針の検討を進めていますが、あくまで指針であるため、これによって一律に提供すべき「合理的配慮」が決まるわけではありません。さらに複雑なのは、企業に「過重な負担」が生じる場合は、「合理的配慮」の提供義務はないとしている点です。「過重な負担」の具体的 基準は、企業規模、財政状況などを考慮し、これも指針に定めるとしていますが、そんな判断基準が果たして作成可能なのか、作成できたとしても基準といえるものになるかどうかです。
 このため、安易に一律的な行政指導もできないばかりか、企業内紛争解決手続きを経て最後には訴訟の火種になる可能性が大きいといわざるを得ません。基準が曖昧であればあるほど、各人の解釈の幅が広がりトラブルになる確率が増加します。私法上の効果としては、民法90条(公序良俗)と同709条(不法行為)の規定に則って個別事案を判断することが確認されています。企業としては、トラブルに発展しないよう障害者本人との意思疎通を強固にしていくしかないことになります。
(労働新聞11月4日号)




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