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平成29年6月1日

短すぎた検討期間――監督業務の民間開放


 規制改革推進会議のタスクフォースが、労働基準監督業務の民間開放を提言しました。自主点検票の配布、回収、任意指導などを社会保険労務士に委託すべきとしていますが、少々中途半端という印象です。「取りまとめ」の最後に「引き続き検討すべき」としていますが、官邸側委員が本当に実施したいことは、今後の検討の中にあるようです。  その一つが、チーム監督です。監督官が事業場に立入り調査をする際、多くの場合単独で行っているようですが、様々な帳簿を点検する必要があるので、(民間企業の内実に詳し)社会保険労務士がサポートすれば効率化が図られるのではと提案しています。これに対して、厚労省の監督課では、数をそろえて手分けしてやればいいというわけではなく、いろいろな課題をクリアする必要があるなどと苦しい回答をしています。監督官は、訓練され、勉強しているので適切に実施できる(しかし、実態は身構えて対立構造となることが多い)というわけです。官邸側委員からは、「ちょっと硬直的では」などとする言い返しがありました。
 もう一つ課徴金制度の創設があります。罰金の引上げは、他の法律とのバランスがあり、難しいようですが、課徴金制度についてはもっと「勉強」が必要となりました。課徴金制度は、労働法違反に対する企業の意識をもっと強めてもらうための新しい実行確保措置といえます。最高裁の判例では二重処罰ではなく、今までの制裁制度と併存が可能と理解されているようです。これに対して厚労省幹部は、課徴金制度は経済的な不当利得に対するペナルティーであり、なかなか受け入れられないと反論しました。官邸側委員は、「それじゃ何もしないとのか」などと苦言を呈したうえ、引き続き創設に向けた検討を求めました。厚労省側では、これに応じて今後も検討していくとのことです。
 短い期間でしたが、タスクフォースでは以上のような監督業務の実効性強化、法令遵守に向けた新たな対策の検討が行われました。しかし、結果的に合意されたのは、ほぼ自主点検票の「回収とりまとめ」となったわけです。監督業務の民間開放自体が「歴史的改革」とみれば、まずはこの程度で突破口を開け、今後については「引き続き検討」の部分に期待というところでしょうか。今回の民間開放程度では、監督強化に大きく貢献するとは思えませんので、もっと時間を掛けた本格的な議論が待たれます。





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