令和元年5月1日 | 社保適用拡大で事業主負担が850億円に厚生労働省は、パート労働者への社会保険の適用拡大を検討し始めています。 コスト増、就労調整など労使双方にとって軽視できない問題となりそうです。とくに、今後適用拡大の対象となる中堅・中小企業にとっては、死活にかかわる可能性もあります。 デフレ傾向から脱却できない現状の経済状況下において、消費税増税とのダブルパンチとなれば、ますます経済規模縮小に拍車がかかることになります。世界経済の減速傾向も強まっていますからタイミングが悪いといえます。 一般論としては、できるだけ多くの労働者に社会保険を適用していくのは正しい方向といえますが、既定路線として進めることに反対したいと思います。これまでの調査によりますと、適用拡大に伴う社会保険料の事業主負担総額は、年間約850億円と見込まれる(2017年度)とのことです。なかでもパート労働者の多い「卸売業・小売業」「宿泊業・飲食サービス業」「医療・福祉」といった一部の業種への影響が大きいといえるでしょう。また、人手不足が深刻化しているなか、賃金水準を上げなければならない状況にあり、適用拡大によってさらなるコスト負担増となってしまいます。 労働者側について言えば、適用拡大によって「働き方を変えた」とする割合が16%いました。 そのうち、厚生年金・健康保険が適用されるよう、かつ手取り収入が増える(維持できる)よう、短時間労働者のままで所定労働時間を延長してもらった割合が55%ありました。一方で、適用を回避するために所定労働時間を短縮してもらった割合も依然として33%に達しています。 ビルメンテナンス業界では次のように訴えています。最低賃金がこの4年間で大きく上昇し、今後さらに1,000円近くまで引き上げていこうとしている状況下にあって、地方のオーナーには余力がなくなっていて、既に利益率としては過去最低という統計があり悲鳴に近い声が多数聞かれる、とのことです。 <労働新聞ニュース>より |
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