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令和5年4月1日

~財源確保が課題の育休給付拡充~


岸田文雄首相は3月17日に開いた記者会見で、少子化対策の一環として、育児休業給付の引上げに言及しました。産後の一定期間に育休を取得した男女に対する給付率を引き上げ、休業前の手取り収入の10割を維持できるようにするといいます。所得の減少を抑える仕組みを導入することで、男性の育児休業の取得を促進するのが狙いです。
厚生労働省委託事業の「仕事と育児等の両立に関する実態把握のために調査研究報告書」(令和2年度)によると、男性の正社員が育児休業を取得しなかった理由のトップに「収入を減らしたくなかったから」が挙がっており、回答率は41.4%に達しています。2番目に多い「職場が取得しづらい雰囲気だったから、または、会社や上司、職場の理解がなかったから」(27.3%)を大きく引き離している状況です。
この結果をみると、休業中の収入減を回避できれば、男性の育休取得率の向上もある程度は進みそうです。ただ、給付率を引き上げるには、財源の確保が課題になります。
育児休業給付の主な財源は、労使が負担する雇用保険料です。法律上は8分の1を国庫負担とすることになっていますが、令和6年度までは暫定的に本則の10%に引き下げられています。
育休給付関係の収支をみると、4年度予算では約7800億円の収入に対して支出が約7500億円と「黒字」であり、資金残高は約2100億円です。
一方、現在の給付水準を前提とした厚労省の試算によると、5年度以降は支出が収入を上回り、7年度に資金が底をつくことが予測されています。給付額の伸び率が高い水準で推移した場合を想定した「リスクシナリオ」の下では、資金不足に陥るタイミングが6年度に早まります。
雇用保険制度が本来、失業時や雇用の継続が困難な場合に必要な給付を行うことを目的としているのは言うまでもありません。育児休業給付の支給を、主に少子化対策として位置付けるのであれば、雇用保険から切り離した制度設計・財源確保などを検討する時期にきているような気がします。

<労働新聞編集>






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